老朽アパートの建て替え
木造などで築30~40年経つと建物の老朽化や家族構成の変化などを解決するために、「リフォームをする」か「建て替える」かの問題に直面します。
老朽アパートが抱える問題は様々あります。1つは、空き室問題。長期間埋まらないと、家賃の値下げや大規模なリフォームが必要になってきます。さらに、あちこち傷んで修繕費がかさんで採算が悪化し、アパート自体が不良資産化してしまうのです。
しかし、一方で老朽アパートの場合、ローン返済は終わっている場合もありますので、少しぐらい空き室があっても採算上あまり問題にならないという方もいらっしゃると思います。
また、昨今の建て替え理由で一番多いのは耐震性の問題です。 周知の通り、全国的に大地震が起こる確率が高くなっており、どこで発生しても不思議ではありません。大地震で倒壊するのは古い木造家屋がほとんどです。老朽アパートが倒壊、損壊して入居者に被害が出た場合、オーナーに管理責任が問われる場合もあるのです。 入居者に安心・安全な建物を提供するのは、オーナーとしての責務といえます。
では、建て替えのタイミングを、建物の強度的な側面とアパート経営の立場からどう図ればよいでしょうか。
- 建て替えのタイミングについて
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- ●耐震性(築30年超物件)
- 1981(昭和56)年以前に建てられた建物は、古い耐震基準で建築されているので、耐震面から考えてそろそろ検討をした方がよいでしょう。
- ●維持・管理費の上昇(改修しても収入が増えない場合)
- 老朽化した建物および室内の補修・リフォームの規模とそれにかかる経費を算出の上、費用対効果のバランスから検討する。
- ●家賃の下落・空き室の増加(空室対策が見当たらない場合)
- 建物や設備が今の入居者ニーズと合わず半分近くが空室であったり、一年以上空室が埋まらない場合、空室対策に家賃を段階的に下げても効果がない場合は、建て替え時期を迎えていると考えた方がよいでしょう。
建て替えのメリットと課題
老朽アパートでよく見られるのが、空き室が多くいわば不良資産化している建物です。 建て替えにより、アパート経営が健全化すれば、当然資産としても優良資産になります。相続の観点からも、将来のアパート承継がスムーズになるというメリットがあるのです。
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merit1火災や地震に強い建物を建てることで防災対策になる!
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merit2優良資産として承継できる。また、相続税、贈与税などの税対策にも効果がある!
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merit3アパート経営の規模を拡大させ、賃料収入増を図ることもることもることもることもることもることも可能!
【立ち退き】立ち退き交渉ポイント
老朽アパートの建て替えで、最も大きな課題が入居者の“立ち退き”です。スムーズにいくケースもあれば、トラブルになる場合もあり、ケース・バイ・ケースです。これまで、入居者と良好な人間関係を築いてきたからといってスムーズに進むとは限りません。
まず、大切なポイントは、オーナーが正しい対応で立ち退き交渉を進めているかということです。
入居者にとって「唐突な解約」や「入居者の事情に全く配慮しない更新拒絶」は、お互いの信頼関係を壊すだけでなく、入居者側の神経を逆撫でし、かえって問題をこじらせる結果を招くことがあります。
正しい手続きと良識的な条件の提示に基づいた解約・更新拒絶の話し合いこそが、無益なトラブルを防ぎ、スムーズに建て替えを進めるカギになるといえるでしょう。
【立ち退き】”正当事由”とは?
そもそも、立ち退きとは賃貸借契約をオーナー側から解約することで、入居者が拒んだ場合、“正当事由”がなければ解約はできません。この正当事由ですが、借地借家法では入居者保護の観点から、余程の理由がなければ、正当事由とは認められません。
正当事由には明確な基準はありませんが、オーナーと入居者の事情を比較した上で判断されます。
例えば、「建物の築年数が古く耐震基準を満たしておらず、倒壊の危険がある」、「オーナーが住む住居をそこに建てる(今は賃貸)」、「相当の立ち退き料を提示する」など、様々な理由を総合的に判断した上で正当事由が認められます。老朽アパートの場合は、耐震性が一つのポイントです。
入居者も、倒壊するかもしれないアパートには住みたくないでしょう。できれば耐震診断を受け、その結果を入居者に見せるなどすれば効果的です。
【立ち退き】立ち退きの進め方とスケジュール
まず賃貸借契約の解約申し入れから始まります。これは、解約したい日の6カ月前までにしなければなりません。
または、更新時期を見越して、更新拒絶の通知を契約期間満了の6カ月前~1年以内に入居者に通知してもよいでしょう。いずれの場合も書面による通知を行うことが大切です。後々のことを考えて書面にして通知の証拠を残しておくことが鉄則です。ただ、いきなり内容証明郵便で解約の申し入れをすると、感情を害する可能性もあり、よく検討する必要があります。
立ち退き交渉は非常に労力を使います。入居者のためにも、時間に余裕を持って進めるほうがスムーズにいく可能性も高いので、オーナー自身、余力のあるうちに早めに計画することが肝心です。また、管理会社やハウスメーカー、弁護士などの専門家に相談するのもお勧めです。
- 立ち退きの流れ
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- 解約申し入れ
(6ヶ月前) - 話し合い・和解
(4ヶ月前) - 転居先の斡旋
(3ヶ月前) - 明け渡し
【立ち退き】立ち退き料について
では、立ち退き料はいくら払えばよいでしょうか?
建物は“一物一価”、仮に全く同じ住宅を建てても立地・周辺環境・方位などが少しでも違えば価値が微妙に異なってきます。
加えて、そこに住む人の住宅に対する必要度や価値観も一人一人違いますから、立ち退きを金銭に置きかえるには極めて難しい判断が必要とされます。これを普遍化することはできないということを前提にしておく必要があります。
よく、転居費+アルファとか3~6カ月分とか言いますが、あくまでも参考にすぎません。ほぼゼロで立ち退いたケースもあれば、何カ月分も要求される場合もあり、様々です。
【立ち退き】入居者の住み替えのフォロー
昨今の立ち退きで問題になっているのが、入居者の住み替え先の斡旋です。
特に入居者が高齢者などの場合、同程度の家賃では転居先が見つからないというケースが増えているのです。いくら本人が了承しても、引越し先が見つからなければ転居できません。
その場合は、不動産会社とも連携してまず転居先を見つけるのが先決です。